今回は、私たちが運営している RPACommunity で開催した
RPALT本体 vol.21 バイトルでお馴染みのdipに密着 ~年10万時間削減の闇と光~の様子をお届けします。
ライター Ayy 編集 Mitz
目次
はじめに
RPALT vol.21 概要
全国に支部を展開しているRPACommunityの中で本体と呼ばれる東京回。vol.21は2020年5月25日(月)にオンラインで開催。
今回は特別企画として、バイトルでお馴染み ディップ株式会社(以下、dip)に密着。RPAで業務時間の時間が、年10万時間にも至ったdip。その取り組みの闇から光まで、赤裸々に語っていただきました。
イベント申込時アンケートの結果はPower BIで可視化。オンラインになり参加者同士の接点が薄くなりがちですが、ここでどんな人がどんな目的で参加しているのか共有することで、自分以外の参加者の存在を意識することができます。
こちら、各項目をクリックすると関連付いた他の数値も連動して表示されます。
参加者ライトニングトーク
登壇者
・【選定編】 石井さん / dipがオススメする”ハイブリッドRPA”とは?
・【導入編】 石井さん / 総業務数140件以上!スモールスタートから始めたRPA
・【開発編】 小沼さん / ロボットとの上手な付き合い方
・【運用編】 乃万さん / 変更したいお問い合わせ先と嫌いなあいつ
・【拡大編】 小林さん / 転用して削減時間倍増 ロボットのリサイクル
発表内容
今回、「dip レディース連合」と名付けられたdip所属の4名の女性陣がRPAツールの選定から運用、そして拡大に至るまでの課題や解決などの取り組みについて詳しくお話いただきました。
選定編から導入編については、石井さんよりお話いただきました。
【選定編】
社内の生産性向上を目指してRPAツール活用を始めた当初、dipでのツール選定のポイントは「安価なツールで、使い勝手が良い」いわゆるコスパ最強なものでした。しかし、実際に使っていくとトラブル続出。削減効果の大きい業務に絞りすぎてしまい、複雑な業務までもロボット化、そして属人化してしまいました。
失敗してしまった例として「日付フォーマットが一致していないExcel」の自動化業務がありました。「令和2年5月1日」「2020/5/1」など、入力された日付フォーマットにばらつきがあり、これをムリヤリRPA化しようとしましたが、実はシステム側で制御したり、記入例を提示して運用に任せた方が速いということに後から気付きました。
そこで、RPAツールに対する考え方を「RPAツールの強みを活かした使い方」に方針転換。
ロボットの開発範囲を小さい業務(5分程度の業務)にし、向かないことはさせない、システム間のつなぎとして利用することにしました。
安いツールを複数使っているが故の「組合せで全方位RPA」というのもポイントです。以前は「お金を出して導入しているのだから、とにかく効果・費用対効果を出したい」という意識が強く、ツールありきで開発していましたが、「悩んだら目的を思い出そう」と考えるようになりました。
「生産性向上」の手段としてのRPA。dipのRPA化フローを明確にし、悩んだら立ち返るようにしました。同時に、RPAチームを独立させない体制も確立していきました。
【導入編】
2人で始めたRPAの取り組みが、口コミで社内へ広がり去年全社展開を果たしました。今では、140以上のロボットが稼働しており、削減時間は17万時間超になります。
ですが、ここまで行きつくには苦労もあり、「RPA化業務数=ユーザーの幸せ数=導入チームの苦労の数」といっても過言ではないくらいです。
今回は導入でつまずいたこと、心掛けたことを以下の2点のポイントで紹介します。
①保守まで考えて導入を決める
②24時間稼働できるからこそ社内ルールに気を付ける
①「作ったはいいけど直せない問題」。推進チームへの問い合わせが多発してしまい、手動運用に戻ってしまうこともありました。そこで、勉強会を開催したり、ナレッジサイトを活用して情報共有しました。例えば、速度の重いWebサイトではRPAツールではなく、Google BigQueryからGoogle データスタジオ上でデータのビジュアル化を実現したり、メールの問合せをGoogleフォームへ変更するように最適なITツールを活用。運用を考えた導入方法へと移行していきました。
②人間が休んでいるときも24時間365日不眠不休で働く理想を叶えてくれるRPA。しかし、夜間に動いているはずのロボットが出勤してみると、止まっているという事件が発生。社員アカウントでの接続だと、21時にネットワークが停止してしまうと社内ルールが原因でした。RPA社内推進チームは情シスではないので、このルールを知らず原因究明にかなり労力がかかりました。他にも「情報漏洩防止のための画面ロックでロボットが止まる」等のルールがあり、社内ルールも確認しながら開発する大切さを痛感しました。
情シスとの協力・情報連携が必須であり、業務改善はボトムアップ式であるが、組織間の調整はトップダウンが早いということを実感しました。
dipのインターン生からRPAを始めた小沼さん、どのように開発しているかお話いただきました。
【開発編】
現場推進型で開発を進めているdipですが、最初から上手く推進できているわけではなく、失敗やそこからの学びもありました。
RPAには理想と現実のギャップがあります。RPA化する際に「人の判断が必要なところまで、任せたい」という要望があり、部署で作りたいロボットの理想が高いことが多いです。中には、AIと混同している人も多く「RPA ≠ AI」であると理解してもらう必要がありました。
そのため、体制の整備に力を入れました。現場も開発も業務の詳細が把握できるテンプレートをつくり、業務の詳細やかかっている時間などの項目をもたせました。また、全社でRPA化業務のサマリを共有。全部署のRPA業務を一覧で管理しているため「どんな業務がRPA化できるのか」、現場の方でも判断しやすくなりました。やりたいことが細分化され、RPA化する・しないの判断も、開発も速くなりました。
RPA化が初めての部署では、開発チームが最初の手助けに入り自走のお手伝いもしています。心掛けていることは、現場で自走させるため、作成時のギャップを無くすことです。開発の手助けとして教育ポータルも用意されており、基礎講座も営業編とバックオフィス編で分けられていたりと自己学習が可能な点もポイントです。
社内のRPA開発を活発化していくために、現場に認知・理解をしてもらい、部署内での自走を確立し現場推進型の開発へとつなげています。
2019年4月からインターン生としてRPAに関わる現役大学生の乃万さんから、「変更したいお問い合わせ先と嫌いなアイツ」というタイトルでお話いただきました。
【運用編】
理想の運用法は、後は現場で頑張ってやってくださいねと「ロボットを渡して完了」すること。ですが、現実はそう甘くありません。現場へ引き渡した後、利用部門内で解決できないエラーが出たという問合せが多数発生しました。その都度、RPAチームが現場に足を運ぶことに。
そう。タイトルの「嫌いなアイツ」とは「ロボットのエラー」のことです。今まで出会ったエラーのTOP2は「ツール自体の不具合」と「データ量の増加」です。
エラー発生時、どこで処理が落ちてしまったのか突き詰めていきますが、開発段階でも見たことのないエラーで「作成時のミスではないのでは?」と思い開発会社に問合せをしました。問合せた結果、バージョンアップアップをすることで解決。ここに行きつくまで時間がかかってしまったので「ツール自体の不具合」という観点も視野に入れた調査が必要だと痛感しました。
また、データ蓄積の処理ロボットではどんどんデータを蓄積した結果、ファイルの読込時間もどんどん長くなりエラーが発生。現場と相談しデータのライフサイクルを決め、一定期間以上のデータは削除するようにしました。この削除処理はRPAツールでは対応が難しかったため、GASで解決。データを扱う場合は、蓄積型なのか、更新型なのか、そのデータ量の増加に耐えうる設計と開発が必要です。
今後 現場で解決できる仕組みづくりとして、よく出るエラーまとめを作成しました。現場開発の手助けはもちろん、問合せ数の削減にも繋がりました。運用につまずいたときは現場と相談したり、他のメンバーにアドバイスを求めたりしながら、柔軟な対応が必要です。
最後は、RPAチームの統括 小林さんから拡大について「転用して削減時間倍増!ロボットのリサイクル」というタイトルでお話いただきました。
【拡大編】
全社展開を進めていると、「同じようなロボットがあちこちで開発されている…」ということが起こってきます。せっかく作るのであれば、みんなで共有することでラクして開発が進み、「作成時間 < 削減時間」で効果を実感できるのにと感じました。
そこで、RPAをリサイクルの「3R」に例えてお話します。「Reduce」作りやすいツール選定し、無駄なく構築していきます。「Reuse」既に開発されたパーツが沢山ある為、既存パーツを転用していきます。「Recycle」使わなくなったり、老朽化したロボもパーツにして転用できる為、改善して作り替えていきます。パーツ単位でより良いところを発見し、更にバージョンアップさせます。
3Rを意識することで、最小限の工数で時短作成が可能になりました。改善見込みがあれば、既に運用されているロボットでも改修して、より使い易くするという工夫も行っています。
うまく運用させるための取り組みも紹介します。
定例会議で、開発したロボットを共有したり、まだRPAを開始したばかりの部署向けには小規模定例会議も開催しました。それぞれの部署ごとに、同じような業務をしていることもある為、知見を集めて共同で開発することもありました。足並みを揃えるという点では、Slackを活用し、DMでの案件やり取りはNGというルールを設け、ナレッジはみんなで共有することを徹底しました。みんな頑張っている姿がみえるので、互いに影響しあってロボづくりが活発になりました。
最後に、dipでは、RPAから次のフェーズに向かっています。AIなども使った業務改善を今は目指しています。
イベント内では、参加者からQ&Aの時間も設けました。その場で気になったことを聞けるのがリアルタイムイベントの良さですね。
また、RPAについてのお話でしたが、皆さん共通してRPAツールに頼りすぎず適材適所で様々なツールや方法を組合せた運用を推奨されていました。
まとめ
最後はみんなで集合写真
RPALT本体 vol.21にご参加いただいた皆さま、本当にありがとうございました!!
イラレコ支部のひぐっちゃん(@asagaogold)と品川さん(@rasu666)がオンラインで描いてくれた「オンラインイラレコ」もご紹介。
ひぐっちゃんのイラレコ
品川さんのイラレコ
登壇いただいたdipレディース連合の皆さま、ありがとうございました。参加者にとってdipのRPAに関する取り組みについて、気になるアレコレを聞くことができ、学びとなることも多かったイベントになったのではないでしょうか。
イベントの様子はYouTubeにもアップされています。今後もコミュニティの様子を見たい、イベント時の復習がしたいという方は、是非チャンネル登録もよろしくお願いします。
株式会社コミュカルが運営するコミュニティ・イベントマガジンです。
色々なコミュニティの魅力やイベントのレポートを届けていきます。
コメント